【ちょっと書評】『後巷説百物語』(京極夏彦)

後巷説百物語
直木賞受賞作ということで、深く考えずに書店の本棚から抜き出しましたが、百物語シリーズとしては3作目(前巷説百物語の14~18年後)だったのですね・・・。
その分、重要な登場人物である御行の又市、山岡百介、山岡小夜のバックボーンがわからず、読んでいても深みが出ないのですが(作者には何の落ち度もございません)、6篇の物語はじゅうぶんに楽しめました。

「百物語」と聞いて「怪談」をイメージする人は多いと思いますが、この作品では、面妖な事件が発生し、後に”不思議巡査”と呼ばれる矢作剣之進とその仲間である3名の人物が侃侃諤諤を繰り広げたのち、一白翁(山岡百介)に相談を持ち込む、という流れ。

(五位の光より)
不思議巡査の話の契機(きっかけ)は実に曖昧だ。果たしてどんな事件なのか、何が不思議なのか、剣之進は初めのうちはけっして語らないのである。
持ち込まれる話題はいつも荒唐無稽である。鬼火はものを焼くのかだとか蛇は何年生きるかだとか、山男は人か獣かだとか、凡そまともな話ではなし。結果的にその背後にはまともな事件が潜んでいるのだが、剣之進の話の端緒はいつも怪談の類なのである。

で、紐解いてみれば、そのすべてに御行の又市と山岡百介が係わっていた、ということに。
少し都合が良すぎる感じはありますが、それが嫌味にならないのは、怪奇でありながらせつない話であることが大きく、何より、物語の流れが「京極堂シリーズ」を彷彿とさせるからでしょうね。

だから、読みはじめて間もなく「前巷説百物語」「西巷説百物語」「巷説百物語」「続巷説百物語」という他の4作への想いが募りました。
もちろん「京極堂」に対しても。
「邪魅の雫」が発表されたのが2006年。もう新作は出ないのでしょうかね。