【ちょっと書評】原発輸出を目論む政権の暗躍を描く──小説「コラプティオ」(真山仁)

コラプティオ


原子力技術を有する電機メーカーを国営化し、原発輸出による国家基盤の強化を目論む政権の暗躍を描くフィクションです。

「別册文藝春秋」に連載されていましたが、最終話の入稿を目前に東日本大震災が発生。懊悩の末に福島第一原発の事故を盛りこんで物語を完結。単行本化にあたっては、物語そのものを福島第一原発の事故発生後という設定にして作り変え、原稿用紙500枚分の文章を差し替えたとのこと。

「もしかすると、読者や専門家から大バッシングされて、小説家としてやっていけなくなるかも知れないという恐怖を抱きながら」(本の話 2014年2月号)と語っておられますが、完結目前であの事故が発生するというのは、むしろきわめて強い星のもとにおられるということではないでしょうか。

原発事故を起こし世界中から不信を買った国の首相が復興政策として原発の輸出を進めるなんて、あってはならないと思ってしまいますが、この物語に登場するリーダーは違います。

「ピンチこそ最大のチャンスというのは、私の生き様のようなものだろ。足が悪いから、強く生きられた。つまり負の遺産である原発産業こそが、起死回生の切り札じゃないだろうか」
宮藤の言葉には迷いがなかった。
「そして、世界でもっとも安全な原発を建設できれば、我々は自信を取り戻せるとも思っている。ならば前に進もうじゃないか」

やがて、舞台は日本からアフリカへ。
「なんとしてもウランを確保する」という命題を軸に物語は展開されます。
「どう棄てるか」という点にまったく触れられていないのは残念でしたが、それでも原発の是非を再考するにはとてもいい小説だと思います(あくまでもフィクションですけど)。

それにしても、文庫本の発売を待っていたかのように東京都知事選の候補者が出揃い、「原発ゼロ」の言葉が眠りから醒めたようにメディアを走り出すとは。今だからこそ読むべき小説ということでしょうかね。

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