桂文枝独演会@町田市民ホール

桂文枝独演会@町田市民ホール
演目
「猫すねちゃった」 桂三語
「国技・インターナショナル大相撲」 桂三歩
「芸者ちどり・24歳」 桂文枝
仲入り
「涙をこらえてカラオケを」桂文枝


前座を含め、演目はすべて桂三枝時代の創作落語です。
6代目文枝さんの姿を生で見たのは初めてですが、僕の幼いころからテレビのなかでもスターであり続けておられるだけあって華がありますね。前座の噺が始まって間もなく、薬でも盛られたかのように座席に後頭部を預け、大きな口を開けて眠ってしまった老夫婦も、文枝さんの出囃子で目を覚ますと姿勢を正して拍手を送っていました。

芸者ちどり・24歳

マクラは、上方落語協会の常設寄席「天満天神繁昌亭」に掲げられている『楽』の字にまつわる話。これは文枝さんの頼みを受けて、3月19日に亡くなられた人間国宝・桂米朝さんが書いたもの。『薬』の字をお願いしたのに、どうして『楽』になったのか。そのいきさつをカラリとした笑い噺に仕上げられていました。米朝さんもあちらの世で「あほなこといいないな」と笑っておられるのではないかと思います。

本編は新潟の料理旅館が舞台。近畿機械工業のシマムラ部長と部下のハヤシダ君は地元の会社との大口契約に成功。芸者を呼んで祝杯をあげようとするが、評判の芸者・ちどりを呼べば、老齢の芸者でありちどりの祖母のトキがもれなくついてくるという……。このドタバタ劇で文枝さんが演じるのはシマムラ部長、ハヤシダ君、料理旅館の番頭、芸者ちどり、トキの5役。爆発的な笑いを誘発する構成は創作落語というよりは、「ひとり吉本新喜劇」といった趣。身振り手振りがそれほど大きなわけではないんですけどね。「介護チーク」のくだりで笑いすぎて涙が出ました。「オヨヨ」のフレーズを放り込んでくれたのも嬉しかったです。

涙をこらえてカラオケを

ディナーショー形式の『帝国ホテル落語会』でマクラをやっていた時に倒れられたお客さんがいて、客席にかけおりて救急車を呼んだ、という噺がマクラ。このお客さんは耳鼻咽喉科の医師。「私が、誰かお医者さんはおられませんか!?と叫んだ時、手を挙げようかと思ったとおっしゃっていました」。そこから続く耳鼻咽喉科の待合室での噺も可笑しくて、マクラだけで大満足でした。

「涙をこらえてカラオケを」は、寝たきりになってもマイクを離さず、朝から60曲ほど歌い続けるほどカラオケ好きな老人にまつわる噺。前半は「手が離せないんです」が口癖の息子の嫁とのやりとり。デュエットをせがみ『銀座の恋の物語』の途中でぽっくりと逝ってしまうと、葬儀の打ち合わせ場面に転換。これまでに故人の趣味・嗜好に合わせた”ゴルフ葬”、”麻雀葬”、”パチンコ葬”を成功させてきたと胸を張る葬儀社の提案を受け、故人を偲んで開催された”カラオケ葬” で、喪主や嫁が選曲したのはどれも、葬儀にふさわしくない曲で……。

カラオケのシーンではハンドマイクを握って歌う文枝さん。アカペラでもうっとりするほど巧い。ネタで出てくるのは都はるみ『北の宿から』『好きになった人』、長渕剛『乾杯』の替え歌ですが、アレンジ次第では昭和歌謡を知らない若い世代も笑いの渦に引っ張り込めそう。また、それができるのは文枝さんを置いて他にいないと思います。


リニューアルオープン?

町田市民ホール
会場の町田市民ホール。リニューアルオープンといっても、耐震化のために天井の形状を変更しただけ。文枝さんは高座から「こっからそっちだけ、新しくなったようでございます」とおっしゃっていましたが、5年ぶりに来た僕はどこが変わったのかまったく分かりませんでした。

ネタは最高、観客マナーは……

町田市民ホール
満員の客席は、おそらく9割が60代以上だったはず。落語好きな方が多い世代と言えるでしょうけど、マナーは最低。ネタを遮る咳(しわぶき)が多すぎます。春先だから風邪をお召しになっていた方が多かったのかもしれないし、齢をとれば痰もからむでしょう。でも、だからといって気のままにケンケン、ゲホゲホとやっていいわけはない。ネタが始まったら、せめてハンカチや手を口に当てるくらいのことはしなさいよ。

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