ポケモンGOによって露呈するかもしれない人間性についての考察。

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僕はスマホのゲームで長くおつきあいができる作品にいまだ巡り会えておらず、ここ数年で一番楽しめた実感のある「Ingress」でさえ、毎日ログインしたのは最初の2週間ほどで、1カ月後にはすっかり飽きていました。ですから「Ingress」と同じく位置情報がベースで操作感覚も似ていると聞いていた「ポケモンGO」に特別な期待はなく、リリース当日にウオーキングをかねて近所を30分くらい散歩していくつかのモンスターを捕獲した後、すみやかにアンインストールいたしました。

プレイヤーのビジュアルが気にいりましたし、直感的に操作できる点に感心もしましたが、なにしろポケモンにまったく興味がないもので。僕の年代だと子育てを通じて接点を持ち、理解を深められるのでしょうが「ピカチュウってどれ?」というありさまですからね。馴染み深いドラクエのモンスターでやってくれたらまた違ったかもしれませんか、コレクター癖もないのでおそらく長続きはしなかったでしょう。

そんなわけでこの週末はさまざまなメディアを通じ、繁華街やら駅前広場やら公園やら夜間は立ち入り禁止の社寺仏閣周辺やらで歩きスマホをする人々の姿を拝見していました。自身の動体視力や反射神経をどれだけ過信したら人と車が行き交う繁華街であんな真似ができるのかと思いますが、クルマにはね飛ばされようが駅のホームから転落しようが歩きスマホを継続することで開花する可能性があるのかもしれません。

たとえばそう、サッカー。一流選手の条件は?と聞かれて「顔を上げながらボールを思うがままに扱えること」と答える指導者もいるくらいですからね。10年後、日本を代表するゲームメーカーになったプレイヤーが試合後のヒーローインタビューで
「先制点の場面を振り返ってください。すっばらしいスルーパスでした」
「ありがとうございます」
「どうしてそんなに視野が広いのですか」
「子どもの頃からひとの何倍も歩きスマホでトレーニングしていましたから、当然です。今日もゲーム中にゲームをしていましたよ。はっはっは」
「”ポケモンGO”チルドレンというわけですね。次の試合も期待しています!」
なんて会話をすることがあるかもしれません。

ソーシャルゲームは車の中もプレイ空間になります。乗用車を運転中に「ポケモンGO」をプレイしていたとして、兵庫県では早くも20代男性に交通違反切符が切られたらしいですが、こんなのはごく一部で、そのうちにハンターどうしの衝突事故なんてケースも出てくるでしょう。その場合はどういう話になるのでしょうね。どっちがレアなモンスターを捕獲しているか、ということで賠償責任が左右されるのでしょうか。それとも、同乗していた子どもの額がぱっくり割れていようが前歯が2本ぽっきり折れていようが子どもに夢を与えるポケモンシップに則り、保険会社にすべてを委ねて仲良く修理を済ませたあとはどちらかの家に集まり、狭苦しいオープンデッキで手際の悪いバーベキューを楽しむのでしょうか。

Twitterで拡散された「某県某所に激レアなモンスターがいる」というデマを信じて親のクルマを飛ばし、見通しのいい直線で横転して帰らぬ人となってしまった場合はどうでしょう。おそらくご両親はわが子がその場所にいた理由を探ろうとするでしょう。車を運転しながらスマホをいじるような人は例外なく自己管理能力が乏しくセキュリティ対策も激アマなので、苦もなくパスワードを見破られてスマホの中を隅々まで閲覧されます。「ポケモンGO」をプレイしているうちにハンドル操作を誤ったのだと判断されるまで、そう時間はかからないでしょう。

「第一希望の大手企業に内定をもらって喜んでいたのに、こんなことで死んでしまうなんて……」
ご両親の落胆ぶりは察するに余りあります。とうぜん、ダウンロードしていたエロ画像や動画のたぐいも残らず発見され、芋づる式にPCのHDDの中も隅々まで検められてしまうので、親族の涙は真夏のアスファルトにこぼれた水滴のごとくあっさりと蒸発し、ささやかにして憤怒に満ちた密葬の運びとなります。

それでも情報は漏れるものです。彼の数少ない友人たちがSNSで発信する尾ひれのついた事実は葬儀の日を待たずそれなりの人数へ伝わります。また、勤務先の代表として訪れた直属の上司も、こらえきれずに社内限定のコミュニティサイトにつぶやきます。
「仲間として迎える前に亡くなった新人くんの実家で役に立たないモンスター捕獲。ちょーウケる」

これから先、何が育まれ、どんな人間性があぶり出されるのでしょうか。
興味は尽きません。

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