【ちょっとレビュー】アゲイン 28年目の甲子園

公開初日(2015年1月17日)に行くつもりでチェックしていたのに繁忙期の波が予想以上に大きくて、劇場で観ることが叶わなかった『アゲイン 28年目の甲子園』をDVDをレンタルして視聴。町田市近隣の劇場では公開期間がやけに短かかったうえに(1カ月もなかったような)、お薦めする声がまったく聞こえてこなかったし、TSUTAYAにはわずか一枚しか置いていなかったのでどうなのよ、と思いつつでしたが……よかったです。期待していたとおりの作品でした。

主人公の坂町晴彦(中井貴一)、高橋直之(柳葉敏郎)、立原裕子(和久井映見)らが川越学院野球部で甲子園を目指していたのは、僕の高校時代と同じ1982~1984年の3年間。僕はサッカー部でしたが、卒業して30年経った今でも親友と呼べる友達が野球部にもいたので、最初から前のめりで物語のなかへ入り込んでいきました。

出場辞退を余儀なくする傷害事件を起こし、全員に恨まれながら姿を消したチームメイト・松川典夫(大賀)の娘・戸沢美枝(波瑠)が、ある日突然目の前に現れて「父は震災で亡くなった」と告げる。そこから展開される物語の縦軸は、世代を超えてマスターズチームを結成し、地区予選の決勝を前に柳田建司(西岡徳馬)が口にするこの台詞に集約されています。「マネージャーが傷つけられて黙っていられる野球部員なんていない」

アゲイン 28年目の甲子園
目を惹いたのは、野球経験がまったくない中井貴一のプレイぶり。全編フィルム撮影で試合シーンも代役なし、ということで猛練習したと公開前に語っていましたが、演技でここまでできるものなのかと。バッティングフォーム、敵ベンチ前に上がったファールフライの追い方、ダイビングキャッチからスローイングまでの動き。どれも凜としたかっこよさがありました。

だからこそ、幼い頃から晴彦にソフトボールを教わっていたという設定の沙奈美(門脇麦)とのクライマックスシーンは、もっと厳しく”女の子投げ”を矯正してもよかったかも。僕の高校ではひとつのグラウンドを分け合って部活をしており、硬式野球部に勝るとも劣らないソフト女子のたくましく激しい練習を間近で見ていましたので、野球素人の中井貴一がここまでやるのであれば、と。女の子らしさが残っているからいじらしくて泣けた、というのもあるんですけどね。


マスターズ甲子園の公式サイトによると、現在の加盟校は全国で509校。2015年の全国高校野球選手権の参加校が3,906校ですので、7分の1ほどですね。2015年の地方予選リーグで最も参加校が多かったのは熊本県で46校。全都道府県に加盟校があるわけではなく、僕の出身地である京都府は加盟校がゼロなので地方予選は開催されていません。

この現状は、昔の仲間と一緒に、甲子園を目指してまた野球ができるという楽しみが生まれるにしてはすこし寂しい気もしますが、作品の序盤でエースでプロ志望だった高橋直之(柳葉敏郎)が怒りにまかせて吐きだした台詞と同じで「繰り返すなんてできない。そんな簡単じゃない」ということでしょう。何よりも野球が好きで、仕事、家族、体力的な問題をクリアできたとしても、おいそれとは参加できない理由が、多くの元球児にはあるのでしょうね。

恨み、嫉み、蔑み、後悔、失望、喪失。9つしかないポジションを巡って高校球児がしのぎを削るグランドでは、最後の夏ともなれば、夢、友情、信頼、尊敬、絆、勇気といった甘酸っぱく聞こえのいい信条を蹴散らしてそんな後ろ暗い感情が渦巻いていたはずで、20年が経ち、30年の月日が流れた今も、水に流すことのできない濁りが心の隅に留まっていたとしても不思議ではありません。

マスターズ甲子園の栄光は、そんな過去を振り払った先にあるもの。その意味では、10代で目指す甲子園よりも過酷な道のりといえるかもしれませんね。

マスターズ甲子園オフィシャルサイト

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