【ちょっと映画レビュー】インサイダー(1999年・アメリカ)

インサイダー(1999年・アメリカ)

ジャーナリズムとメディアに関する書籍を読みあさるうちに

8月に入ってから、わけあってジャーナリズムとメディアに関する書籍を読みあさっています。で、導かれたのがこの映画。『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』(双葉新書)のなかで、「大企業に対する批判的な報道は広告引き上げという大きなリスクを伴うが、新聞にとって最も重要な財産は読者の信頼である」、と断言する著者(マーティン・ファクラー/ニューヨークタイムズ東京支局長)が、本書の読者なら興味があるはず、と紹介していたのです。名優アル・パチーノラッセル・クロウの競演とあれば捨て置くことはできません。早速ネットで調べてみると、なんとその翌日のタイムテーブルにタイトルが……!WOWOWがあって良かったと実感するのはこういう時ですね。

『インサイダー』は内部告発者

タイトルの『インサイダー』にあたる最初の”内部告発者”は、アメリカの大手たばこメーカーB&W社の研究開発部門で副社長を務めていたジェフリー・ワイガンド(ラッセル・クロウ)。不当な解雇を受けたのを機にたばこ産業の不正を告発することを決意し、CBSのドキュメンタリー番組『60 Minutes』のプロデューサーであるローウェル・バーグマン(アル・パチーノ)に極秘ファイルを届けます。そしてメーカーの卑劣な脅しに屈することなくカメラの前ですべてを話します。
しかし、ワイガンドとの秘密保持契約をタテにした高額訴訟に腰がひけたCBSの幹部は、インタビューの核心部分のカットを命じ、看板キャスターもそれに同意。休養を言い渡され、会社に絶望して番組を降板したバーグマンは傷心の旅に出ますが、不正の告発によって家庭を喪ったワイガンドの胸中をおもんばかり、ジャーナリストとしての信念に基づいて自らも内部告発者となります。

近年の日本で言えば東京電力とメディアの関係

実話に基づいた映画ということで、テレビ局、新聞社、たばこメーカーなどの企業名はすべて実名。「毎朝」「帝国」「東都」など、使い古された架空の企業名が踊る日本とは違いますが、『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』の内容に基づいて近年の日本と照らし合わせれば、B&W社は東京電力。CBSの幹部はすべてのメディア企業の上層部といったところでしょうか。経営のトップや看板キャスターに「あなたたちはビジネスマンかジャーナリストか、どっちなんだ!」と噛みつく度胸のあるプロデューサーは、いない気がしますね。そもそもジャーナリズムを理解している人がどれだけいるのかって話で、マーティン・ファクラー氏もそれを嘆いているわけですから(著書では本物のジャーナリスト、希望が持てるメディアについても記述していますけど)。

二人の妻の立ち振る舞いの違いが印象的

ジャーナリズムとは何か。それが作品のテーマであることを疑う余地はありませんが、印象に残ったのは人生のパートナーである妻の立ち振る舞いの違いです。ジャーナリストの仕事と使命を理解し、どんなことがあっても夫を支えるという気構えを持っているバーグマンの妻。一方、ワイガンドの妻は会社を解雇されたことを嘆き、子供の医療費や住宅ローンの支払いについて不安を覚え、家を出ていきます。残酷なようですが、窮地に陥って初めて、何よりも大切に思ってきたパートナーの本性を知るのかもしれませんね。
次回の放送は2015年9月24日(木)午前4:00