【ちょっと映画レビュー】天空の蜂(2015年/日本)

天空の蜂

大多数の日本人が背を向けてきた事実と改めて向き合う。

文庫本で原作を読んだのは10年以上前。読み応えのある長編でしたが、今は本棚にありません。一度読めばじゅうぶんと思えたのは、原発がテロの標的になるということにリアリティを感じなかったからでしょう。というよりも、原発について何も分かっていなかった。知ろうとしなかった。近い将来、津波によって原発が破壊され、数十万人がふるさとを失うことになるなんて、想像したこともありませんでした。

そんな僕も、今は事件の背景を理解したうえで、登場人物たちの気持ちをくみ取ることができます。方法はどうあれ、「原発が生み出すエネルギーをすきなだけ使ってきた多くの国民が、これまでずっと目を背けてきた事実を見せてやりたい」という犯人たちの想いは、震災によって原発の恐ろしさを知った多くの人の感情を揺さぶるでしょう。その意味では満を持して登場した作品。東日本大震災がなかったら、映像化されることはなかったでしょうね。

犯人の要求は、福井県の高速増殖炉。その真上に爆薬を積んだ軍用ヘリを遠隔操作でホバリングさせ、日本全国の原発を破棄しろ、と要求します。面白いのは、原発に関わったために家族を喪った過去をもつ主犯に残されていたひと握りの良心と、人命を尊重するとみせかけて経済成長の象徴であり生活に豊かさをもたらしてきた原発を守る決断を瞬時に下す政府の腹黒さとの対比。原作にはないラストシーンもよかったです。欲をいえば、アメリカの存在をちらつかせてほしかったですけどね。現実には、原発をつくるのもたたむのも、アメリカの判断ひとつなんですから。

WOWOWでの2016年6~7月の放送は、6/23(木)19:30、6/26(土)17:30、7/15(金)11:00、7/23(土)13:50、7/31(日)18:30

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