4月某日、東京の大学に進学した娘さんの入学式に出席するために車で東京へきたH君と、相棒のM君、恵比寿のアパレルメーカーで活躍中のK君と東京・蒲田で再会しました。3人は中高時代の同級生。懐かしい話をして笑えただけで十分に嬉しかったのですが、一週間後、”海の京都”丹後で手打ち麺をこしらえている「hedi屋」(へじや)店主のH君からはうどんと出汁、生パスタが。M君からは伊根のへしこが届きました。感謝の気持ちを込めて、いかにして食べたのかをお伝えしておきます。創作はできないのでスペシャル感はないのですけど。
まずは手打ちうどんから。麺は国産と豪州産のブレンド小麦と丹後のわき水、「鳴き砂」で知られる京丹後市・琴引浜の塩を丹念に練り込んだ太麺。出汁は丹後のわき水、宮津の醤油(ふくろ屋醤油)、伊根の酒(向井酒造)、北海道産の真昆布、喜界島産ザラメ唐などで構成した逸品です。
初日は店主おすすめの「釜玉うどん」。茹でた麺に生卵をのせてかき混ぜ、出汁をかけていただきます。いつだったか、テレビのバラエティ番組でロックバンドのボーカリストが讃岐うどんのおいしい食べ方として紹介していたのを見て以来、僕も釜玉が好きになり夏場は毎日のように食べていますが、コシといい風味といい、スーパーで販売している3玉100円の麺とは比べものになりません。ずる、ずる、ずるるんと、3口でかき込んでしまいました。絶品です。間違いないですね。
2日目は温かい月見うどん。関西風にしては出汁の色合いが濃いと感じたので、味をよく確かめもせず、店主さんに薄めるの?と聞いてしまいましたが、失礼千万でした。味わい深い、すばらしい出汁です。麺にさりげなくしみ込むあたり、品格すら感じます。いつもは市販の本つゆを薄めて食べているのですが、出汁を自分で作ってみたくなりました。僕の味覚では、何かが足りないのは解るが、何が足りないのかは解らないので苦難の道でしょうけどね。
3日目はきざみうどん。安価なわりに歯ごたえのいい油揚げなので、コシのある麺と一緒に食べると、もうたまらんという感じです。ちなみに。ネギとかまぼこは写真の見栄えを良くするために用意したもので、いつもは一味とうがらしをかけるだけ。こうして食べてみるとぜんぜん違いますね。ひと手間を惜しんではいけないと学びました。
4日目はわかめうどん。そこいらで売っている乾燥わかめをお湯で戻してのせただけなのに、麺が頼もしいからうまさ倍増です。歯ごたえがいいと満腹中枢を刺激すると言いますが、そのとおりですね。一杯でじゅうぶんに満足できる組み合わせです。
ラストは天ぷらうどん。イカ天とエビ天を一尾ずつのせてみました。どちらも100円以上するので、僕のなかではかなり豪華なうどんです。出汁が温かいのでスーパーで買ってそのままのせましたが、揚げたてでサクサクの衣ならもっとおいしいのでしょうね。あれ、でも。天ぷらがアツアツのうどんを食べた憶えがないような・・・・・・。
続きまして、パスタです。同封のリーフレットによると、粗めのカナダ産セモリナ粉と、伊根町(三野養鶏場)で生米ぬかやカキ殻を食べて育った鶏の卵を、多渇水で練り込んだもの、とのこと。「セモリナ」とは、小麦の胚乳の粗い粒のことなんですね。製粉工程で小麦をかるく粉砕することによって、胚乳を細かくしないで、ざらめ状で採り出すらしいです。知りませんでした。実は生パスタを食べるのは初めてなんですよー。
リーフレットにはクリームパスタのレシピが掲載されており、いち早く腕を振るったK君からは「カルボナーラにぴったり!」と報告を受けておりましたが・・・・・・僕はクリーム系のパスタを一度も作ったことがありません。初めての生パスタでリスクを負うこともないと思い、初日は「自分で手早くできる最も好きな味のパスタ」になっている『のりのりパスタ』。
出汁は「ほんだし」でOK。フライパンひとつで簡単にできます。生麺は茹でる時間が短くていいですね。焼き海苔を入れると出汁を吸ったモッチモチの麺にとろみが加わり、これまでで一番の出来映え。ゆず胡椒との相性の良さも世界一じゃないかと思えるほどです。
レシピはこちら
翌日は『鶏肉としめじのトマトソース』でございます。トマトは、量販店で売っている1缶100円のダイストマト。コンソメとケチャップでしっかりめの味にして、スキムミルクを使ってちょいとクリーミーにしております。写真ではわかりにくいですが、鶏肉は胸とモモ肉のミンチをスプーンですくって団子状にしたものです。カロリー計算はしませんけど、ヘルシーなんじゃないですかね。しめじとトマトは一人では食べきれないので、次の日はササミで作りました。「見た目は悪いがそこそこ食える」僕の料理も、hedi屋の生パスタを使えば「見た目も味もけっこういい感じ」になります。
そして、最後に紹介させていただくのが、鯖の「へしこ」。知らない方のためにご説明すると、塩を振った鯖をぬか漬けにした丹後・若狭地方の郷土料理です。丹後で生まれ育った僕にとっては幼い頃から慣れ親しんだ味のひとつです。時折、何かの拍子に猛烈に欲することがあり、東京へ来てからもネットショップで何度か探したことがあるのですが、帰省した時に焼いてもらおうと我慢して10数年が経過。宴席での口約束を律儀に守ってくれる同級生がいなければ、あと10年くらい食べられなかったかもしれません。
調理はいたって簡単。好きな大きさに切って焼くだけ。ウチには焼魚用の網がなく、ガスコンロのグリルを使うと掃除が面倒なので、オーブントースターにアルミホイルを敷いて6~7分ほど。ひさしぶりなので糠をどのくらい残していたのか思い出せないまま火を入れましたが、色をみてこんな感じだったと納得。どう焼いてもうまいのでしょうけどね。
まずは白い御飯と一緒に食べて、二杯目はお茶漬け。焼き海苔をちぎってまぶしただけですが、くせのある風味が懐かしい。これはほんと、丹後の味です。高校時代、部活のあとで学校近くの食堂でラーメンを食べたり、買い食いをして帰宅しても、食卓にへしこがあれば大盛りの御飯を食べていたなぁ。
翌日のお茶漬け。まぶした焼き海苔のうえに水菜をちりばめ、塩昆布をのせてみました。我ながら、これはなかなかの組み合わせ。水菜のしゃきしゃき感に箸が止まりません。
これでおしまいです。僕の料理の腕と創造力ではこれが精一杯。
お返しをしたいと思って探したのですが、町田の名物と呼ばれているもののなかには贈って喜ばれそうなものが見つかりませんでした。もうすこし考えますので、気長に待っていてください。
それでは、K君、M君、H君。また会いましょう。それまで元気で!
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